ジングルの作り方 — CMソング制作の手順・費用・AIという選択肢

ジングルは、聞き手に名前を覚えてもらうという、ただ一つの役割を持った歌です。その歴史の大半において、この仕事は外注されてきました。企業はジングル制作会社や作曲家に依頼し、ブリーフを書き、デモを待ち、歌手とスタジオに費用を払い、完成した曲をどこで、どれだけの期間流せるかを交渉していました。よく知られたCMジングルは、今もこのプロセスから生まれています。そこに今、AI生成という、より安くはるかに速く最初の案を手に入れる方法が加わりました。
ジングルとは
Britannica Dictionaryは、ジングルを「覚えやすい短い歌で、テレビやラジオで商品の販売を後押しするために使われるもの」と定義しています。この形式にはおよそ100年の歴史があり、いくつかの有名なジングルを見ると、良いジングルがどれほど長く生き続けるかがわかります。
- Wheaties(1926年)。 1926年のクリスマスイブ、ミネアポリスのラジオ局でバーバーショップ・カルテットが「Have You Tried Wheaties?」を歌いました。General Millsはこれをラジオ初の歌入り広告と考えられているとしています。
- State Farm(1971年)。 Barry Manilowは、クライアントが用意したスローガンをもとに「Like a Good Neighbor, State Farm Is There」のメロディを書きました。報酬は一括500ドルで、印税はありませんでした。
- Oscar Mayer(1974年)。 同社のボローニャソーセージのジングルは、マーケティング担当副社長のJerry Ringlienが書いたもので、1974年のキャンペーンで初めて放送されました。
企業のジングルと混同されやすいものが2つあります。
- スローガンは一行のコピーです。読み上げても、印刷しても、歌ってもかまいません。ジングルはスローガンを乗せることが多いものの、スローガンは音楽がなくても成り立ちます。
- サウンドロゴ(オーディオロゴ)は、短い音のシグネチャーです。数音から成り、歌や声による一語、あるいは効果音を伴うこともあります。代表例はIntelで、広告の最後に流れる5音の短いメロディです。ブランドを識別させはしますが、ブランドについて何かを語ることはほとんどありません。
ジングルはサウンドロゴより長く、スローガンより具体的です。名前を歌い込み、たいていは一つのメッセージ(特典、場所、電話番号、約束など)を伝える短い歌です。
サウンドブランディングが効く理由:研究からわかること
この分野の研究は、ジングル単体ではなく、サウンドロゴ、歌によるタグライン、ジングルをまとめた「サウンドブランディング」全体を対象にしています。そのため、特定の形式というより、ブランドの音を持つことの一般的な有効性を裏づけるものです。
- 米国の動画広告2,015本を分析したIpsosの2020年の調査では、音によるブランドの手がかりを持つ広告は、ブランドへの注目度で下位3分の1より上位3分の1に入る可能性が8.53倍高いという結果でした。こうした手がかりを使っていた広告は全体の6%にすぎません。
- 音声広告113本を対象にした2023年のAudacyとVeritonicの調査では、サウンドブランディングのある広告は、ない広告と比べてラジオで17%、ポッドキャストで14%、想起率が高いことがわかりました。
どちらも広告どうしを比べた観察研究であり、同じ広告にジングルを加えて比較した対照実験ではありません。またAudacyの調査は音声関連企業がスポンサーです。これらが裏づけるのは「ジングルは効く」よりも狭い内容で、音によるブランドの手がかりは珍しく、それを持つ広告のほうが正しいブランドと結びつけられやすい、ということです。
ジングルの作り方:5つのステップ
作曲家に依頼する場合も、ジェネレーターを使う場合も、自分で書く場合も、ブリーフづくりは同じ作業です。次の5ステップで、プロデューサーやジェネレーターがそのまま使える歌詞ができあがります。
ステップ1 — 聞き手に何を覚えてほしいかを決める
歌うとおりの表記で名前を書き、メインのメッセージを添えます。伝えるメッセージは一つに絞るのが定石で、ほとんどのブランドCMではそのとおりです。よくある例外は地域のダイレクトレスポンス広告で、電話番号や住所を加えることがよくあります。その場合は、それ以外に何も載せないときに最もよく機能します。具体的な事実は歌っても伝わります。「深夜0時まで営業」は聞き手が行動に移せる情報ですが、「駅前でいちばんおいしいコーヒー」は埋め草に聞こえがちです。歌い手がどこにアクセントを置けばよいかわかるよう、名前は発音どおりに書いておきましょう。
ステップ2 — 名前を中心にフックを作る
フックとは、人がつい口ずさんでしまうフレーズのことで、企業のジングルならそこに名前を入れるべきです。名前は強拍に置き、メロディが自然に着地するフレーズの頭か終わりに配置します。一息で歌えるフックのほうが、歌いやすく覚えやすくなります。すでにタグラインがあるなら、たいていはそれがフックか締めのフレーズになります。
ステップ3 — 気が引けるくらい繰り返す
ジングルでは、普通の歌がタイトルを繰り返すよりも多く名前を繰り返してかまいません。聞き手はそのCMを一度しか聞かないかもしれず、それも運転中かもしれないからです。コール・アンド・エコー(リードが名前を歌い、バックコーラスが応える)を使えば、新しい歌詞を書かずに名前をもう一度聞かせられます。代わりに1〜2拍ぶん尺を使います。フックを繰り返しておけば、編集者が15秒CMやポッドキャストのバンパー用に短いタグを切り出す際にも、きれいな切りどころになります。
ステップ4 — 音節を数え、リズムはシンプルに
ジングルの歌詞は、規則的なアクセントを持つ短い行で構成され、掛け声に近いものです。各行を声に出して読み、拍を手で叩いてみてください。同じメロディを共有する2行の音節数が大きく違うと、歌い手は詰め込んだり引き伸ばしたりすることになり、言葉が聞き取りにくくなります。ブランド名が歌いにくい場合は、長めの音符にする、直前に1拍の間を置く、前述のコール・アンド・エコーを使う、といった形で余裕を持たせましょう。
ステップ5 — メロディは小さくまとめ、サウンドを選ぶ
ジングルのメロディは、一度聞いただけで歌えるものであるべきです。狭い音域、主に順次進行の動き、名前の上で解決する最後の音は、妥当な出発点であって必須条件ではありません。アレンジには一般的な連想がついて回ります。ドゥーワップのハーモニーはレトロで地元密着の印象に、クリーンなピアノはプロフェッショナルな印象に、ブラスとスウィングはショービジネス風に、シンセのスティンガーはモダンに聞こえることが多いものの、いずれも決まりではありません。ターゲットに合わせて選びましょう。前述の研究が測ったのは音の手がかりの有無であり、キャンペーンをまたいだ一貫性ではありません。そのため以下は推論ですが、認知が手がかりから生まれるのであれば、周りのアレンジが変わっても、ブランドを識別させるメロディのモチーフは変えないほうがよいでしょう。
よくある失敗は、これらのステップを飛ばすことから生まれます。名前を行の途中で一度しか歌わない、複数のメッセージが同じ30秒を奪い合う、行の長さがそろわず歌い手が急かされる、鼻歌にできないほど音域の広いメロディにしてしまう、といったものです。
ジングルの長さ:ラジオCM、ポッドキャストのイントロ、サウンドロゴ
ジングルは、流れる場所から逆算して書きます。ラジオCMは今も15秒、30秒、60秒という決まった尺で販売されています。この3つを比較した2022年のVeritonicとAudacyの調査では、30秒のラジオCMが、想起率などの指標で15秒と60秒の両方を上回りました。ポッドキャストのオープニングはもっと自由で、BuzzsproutのポッドキャストQ&Aでは、音楽と話し言葉のあいさつを含めたイントロ全体の理想的な長さを15〜30秒としています。
ジングルとCMの長さは同じではありません。30秒のCMに、歌のタグが数秒しか入っていないこともあります。CM用のジングルはスポットの冒頭か締めに置かれ、その間にナレーションが入ることが多く、ナレーションの下には別のインストのBGMが流れることもあります。全編を歌で構成した30秒CMもあり、とくに地方ラジオでよく使われます。フルバージョンと短いタグはたいてい一緒に書かれ、同じフックをそれぞれの尺に切り分けられるようにします。
オーダーメイドのジングル制作の流れ
依頼して作るジングルは、価格帯にかかわらず、おおむね同じ流れをたどります。
- 制作者を選ぶ。 フリーランスの作曲家から、ジングル専門の制作会社、エージェンシー級のサウンドブランディング会社まで選択肢があります。
- ブリーフ。 名前、メッセージ、ターゲット、参考となる音、放送・配信先を伝えます。クリエイティブ打ち合わせの場で行うことが多いです。
- 見積もりと権利。 作業開始前に、見積もりで納品物(尺、短縮版、インスト版、ファイル形式)、修正回数、使用権(媒体、地域、期間、独占性)を確定させます。
- デモと修正。 作曲家が最初のバージョンを提示し、こちらがフィードバックを返し、取り決めた回数の修正を経ます。
- レコーディングとミックス。 歌手と、場合によっては生演奏のミュージシャンが本番を録音し、ミックスしたうえで取り決めた納品物に合わせて編集します。
最初のバージョンまでは通常数日、制作を終えた完成版までは数週間かかります。Killerspotsはクリエイティブ打ち合わせから7〜10日後に最初のプレゼンテーションを行い、その後は修正無制限とうたっています。Violet Recordingの価格ガイドでは、セッションボーカリストを起用した制作済みジングルで1〜3週間、多言語キャンペーンでは数週間としています。
ジングル制作の費用:公開されている価格帯
あるスタジオ、Violet Recordingが公開している例では、短いサウンドロゴが約$150〜$500、生の歌手を使わずパソコン内で完結させたジングルが$300〜$800、セッションボーカリストを起用した制作済みジングルが$800〜$2,500、多言語キャンペーンが$2,500〜$8,000以上、有名ブランド向けのエージェンシー案件が$10,000以上となっています。見積もりは制作者によって異なり、時期によっても変わります。
価格差の大部分は、次の4つで説明できます。
- ボーカル。 生のセッション歌手は、費用のなかでも大きな項目です。言語版を1つ増やすごとに、ネイティブの書き手による歌詞の翻案と、もう1回のセッションが必要になります。
- 権利。 ジングルには、楽曲(メロディと歌詞)と原盤(マスター録音)という2つの著作権があり、契約上は別々に扱われることがあります。買い取り(バイアウト)では通常、両方を幅広く無制限に使えますが、ライセンスでは媒体・地域・期間ごとに使用が制限され、更新制の場合もあります。独占性はまた別の条件で、ライセンスによっては、制作者が同じ曲をあなたの市場で他社に再販することを禁じられます。地域の制作者には、継続費用なしで完全な所有権を販売するところもあり、たとえばKillerspotsは上記リンク先のページでそれをうたっています。
- 演奏者への報酬。 米国では、AFMの協約に基づいてジングルを録音した組合所属のミュージシャンは、セッションと、放送使用の各「サイクル」の両方に対して報酬を受け取ります。SAG-AFTRAのCM契約でも、歌手に対して同様の「セッション+使用料」モデルが採られています。使用料が続くかどうかは契約次第で、使用権を買い取ったり、期間を限定したりする取り決めもあります。前述のManilowの例は、作曲家に一括報酬が支払われた歴史的なケースです。
- 修正と短縮版。 追加の修正や追加の尺(15秒、30秒、60秒、タグ)は、別料金になることがよくあります。
オーダーメイドのジングル制作とAIジングルジェネレーターの比較
AIジングルジェネレーターが変えるのは、後半の工程よりも、ブリーフ・デモ・修正といった前半の工程のコストです。次の表では、依頼して作るCMジングルとLacunaのジェネレーターを、予算を左右する項目で比較しています。
| オーダーメイドのジングル制作 | AIジングルジェネレーター(Lacuna) | |
|---|---|---|
| 価格 | 公開価格帯は約$150(サウンドロゴ)から$10,000以上(エージェンシー)まで。セッションボーカリストを起用した制作済みジングルで$800〜$2,500 | 無料で始められる。有料プランは1曲ごとの見積もりではなく月ごとのクレジット制 |
| 最初のバージョンまで | 数日。上記の見積もりでは最初のプレゼンまで7〜10日、制作済みジングルまで1〜3週間 | 通常、1回の生成につき1〜2分 |
| 修正 | 回数は見積もりで決まる。追加の修正は別料金のことが多く、無制限を含む制作者もある | ブリーフや歌詞を編集して再生成。生成のたびにクレジットを消費 |
| バージョン数 | 契約次第。1〜2案を作り込み、取り決めた短縮版を加えることが多い | 生成した数だけ。スタイル、テンポ、声を並べて比較できる |
| 権利 | 制作者によって、買い取り、媒体・地域・期間ごとのライセンス、完全な所有権のいずれか。組合所属の演奏者がいれば使用料が加わる | 有料サブスクリプションには商用利用が含まれる。ProとUltraでは対象トラックの商用ライセンスPDFをダウンロード可能。音声のダウンロードにはサブスクリプションが必要 |
| 正確な尺とミックス | 契約で取り決めた納品仕様(尺、ミックス、形式) | 尺は秒数ではなく形式で目安を指定。15秒や30秒に合わせるにはエディタでトリミング |
出典:上記リンク先のViolet Recording、Killerspots、AFM Local 802。Lacunaの情報はジングルジェネレーターのページと料金ページ、ライセンス条件は商用ライセンスのページによります。
実際的な違いは、どこで試行錯誤が安く済むかにあります。依頼制作では、何案を聞けるかは契約次第で、1案増やすたびに時間か費用がかかるのが普通です。生成なら、1つに決める前に5つの方向性を比べても数分しかかかりません。生成したバージョンをそのまま完成版として使うチームもあれば、放送用バージョンを制作者に発注する前の精密なブリーフ、つまり参考トラックと承認済みの歌詞として使うチームもあります。
AIジングルジェネレーターの限界
テレビ、アプリ、店舗、保留音で10年にわたって機能しなければならない記憶装置としてのサウンドアイデンティティを築く大手ブランドは、今もエージェンシーに依頼しています。納品物が1本のトラックではなく、アセットの体系、戦略、そして権利処理だからです。生成したジングルを15秒や30秒ちょうどに収めるには、たいてい編集が必要で、その際もブランド名と最後の音を損なわないように切らなければなりません。CMにナレーションを入れるなら、ツールが用意できる場合に限りますが、選んだトラックと同じ曲のインスト版や伴奏版も必要です。別に生成した曲では代わりになりません。選べるのは声のタイプであって、特定の歌手ではありません。また、プラットフォームの商用ライセンスは、交渉による買い取りとは別物です。楽曲と原盤の独占的な所有権が必要なら、そのトラックを軸にキャンペーンを組む前にライセンス条件を読んでください。
予算が依頼制作のセッションに届かず、尺の調整が許される用途で、プラットフォームのライセンスが想定する使い方をカバーしている場合(たとえば地方ラジオのCM、ポッドキャストのイントロ、電話の保留音)や、制作者にブリーフを渡す前に複数の方向性を聞いてみたい場合には、生成は妥当な選択肢です。規模感としては、約65万件のAI音楽生成を集計したプラットフォーム横断のサンプルで、ジングルのリクエストは約0.4%でした。
実例:Lacunaで作ったジングル
上のサビの元になったジングルのフルバージョンです。架空のベーカリーのためのドゥーワップ調のCMで、長さは29秒、歌詞は英語です。

このジングルはLacunaのAIジングルジェネレーターで作りました。5つのステップで考えたブリーフを、名前、タグライン、セールスポイント、ジングルを流す場所というフォームの項目として入力します。スポットの形式(スティンガー、定番スポット、フルジングル)で歌詞の構成が決まります。歌詞はAIに書かせることも、承認済みの原稿を貼り付けることもでき、インストゥルメンタルモードを使えば歌のないBGMも作れます。歌うべき名前が候補者の名前になる選挙キャンペーンには、候補者名とメッセージから作る選挙ソングジェネレーターがあります。自分の言葉で説明した長めのブランドソングなら、音楽エージェントが構成、歌詞、アレンジを担います。
よくある質問
ジングルの長さはどれくらいにすべきですか?
流す枠と同じ長さです。ラジオCMは15秒、30秒、60秒で販売され、ポッドキャストのイントロ全体は一般に15〜30秒、サウンドロゴは数秒です。フックをどの尺にも切り出せるよう、フルバージョンと短いタグを一緒に書きましょう。
ジングルの制作費はいくらですか?
あるスタジオの公開価格帯では、短いサウンドロゴが約$150、セッションボーカリストを起用した制作済みジングルが$800〜$2,500、エージェンシー案件が$10,000以上です。差の大部分は、ボーカル、言語版、権利、組合所属の演奏者への報酬で説明できます。
AIでジングルは作れますか?
作れます。AIジングルジェネレーターは、ブリーフから歌詞を書き、それを歌い、数分でトラックを仕上げます。ただし、正確なCMの尺に合わせるにはたいていトリミングが必要で、長期的なサウンドアイデンティティを築く大手ブランドは、今もエージェンシーに依頼するのが一般的です。
楽器が弾けなくてもジングルは作れますか?
作れます。書く作業は歌詞とフックで、名前、一つのメッセージ、シンプルなリズム、繰り返しがすべてです。メロディ、アレンジ、ボーカルは、制作者やジェネレーターが用意します。
AIで作ったジングルは商用利用できますか?
プラットフォームの規約によります。Lacunaでは、有料サブスクリプションに商用利用が含まれ、ProとUltraでは対象トラックの商用ライセンスPDFをダウンロードでき、音声のダウンロードにはサブスクリプションが必要です。プラットフォームのライセンスは交渉による買い取りとは異なるため、キャンペーンに必要な条件と照らし合わせて確認してください。
耳に残るジングルの条件は何ですか?
ブランド名を強拍に置いた短いフック、そのフックの繰り返し、そろった音節数、そして出発点としては、音域が狭く主に順次進行で、名前の上で解決するメロディです。